桃、フリージア、アイリスを「直立型」に生けました。主枝に桃、副枝にも桃を生け、さらにそれらの周囲に小さな桃の枝を添えて、桃の花が数多く華やかに並ぶようにします。桃の枝に触れるとき、花に少し触れただけで落ちてしまうので、優しく扱います。客枝にフリージア、また客枝の左にも思い切って短めにしたフリージアを生けますが、これらのフリージアが俯かないで上を向くようにします。もう1本のフリージアは中央やや奥に配置します。アイリスを主枝の桃の右に主枝と向き合い心通わせるように生けます。もう1本のアイリスは、やや中央前に行けます。アイリスの高低にメリハリをつけるのが大事ですが、短く切るときに秘訣があります。それは実は、アイリスの葉がもともと茎を取り巻くような構造ですので、葉を上の方(花の方)にスライドさせて、下部の茎だけを切ることができますし、さらに葉を茎の周りに回旋させて、収まりのよい方向に整えることができるのです。このようにメリハリをつけ良い形に配置すると、フリージアとアイリスが交流し、フリージアの黄とアイリスの紫が鮮やかに調和します。黄と紫は補色関係にあり、相性がよい取り合わせなのです。今回の花材は、葉が少なく、軸が多いので、足元の剣山を隠すのに苦労します。いつもよりは、生ける位置を密集させて引き締めることと、フリージア・アイリスにそれぞれの葉を寄り添わせて足元が目立たないようにすること、がポイントです。
桃の凛とした枝と可憐な花、フリージアの黄、アイリスの紫が織りなす、桃の節句を先取りした愛らしい盛り花となりました。
(副枝の足元を主枝の足元よりやや外に置くのは基本の基本ですね。)


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